開店の経緯

細く長く、30年以上に渡りそうめんを調べ続けてきました。

小さい頃から「そうめん が好き」。ただそれだけでした。

子どもですから興味を持ったものは調べたくなります。

ところが同じ麺類でも、うどんや蕎麦、ラーメンはたくさんの人が興味を持ち、本やお店がたくさんあるのに何故かそうめんにはありませんでした。

少しづつ自分で調べ始めました。まだインターネットがない時代です。

全国の産地を訪ね、様々なところに問い合わせ、小さな小さな情報を集めてきました。

その中で「ある不安」が生まれました。それは「このままではいつか手延べそうめんは無くなってしまうのではないか」という不安です。

とはいえ、「ただの一消費者である自分にできることはない、なんだかんだ言っても無くなりはしないだろう」と根拠のない楽観視もしていました。

しかし、この10年、特にここ5年ぐらいでしょうか。本当に急速に手延べそうめんが無くなってしまいました。

2024年現在、日本の手延べそうめんは絶滅の危機にあります。

現在、手延べそうめんを作っておられるのは全国でおよそ20軒程度。

そのほとんどが家族2人や小人数でそうめん作りをなさっています。

あと3年から5年程度で、0軒にはならないまでもその多くが消滅してしまうでしょう。

もう時間がない。それが開店の最大の理由です。

機械そうめんと手延べそうめん

そうめんには大きく分けて2種類があります。

機械で「打つ」機械製麺のそうめんと、手作業で「延べる」手延べそうめんです。

別項で説明した通り、「手打」と「手延」の違いは、捏ねた小麦粉を「切って麺にする」か「引っ張って麺にする」かです。

よって、機械そうめんと手延べそうめんの違いは、「機械で切って麺にする」か「手作業で引っ張って麺にする」かです。

これは食品表示法で定められています。

ここまでの情報は皆さんもインターネットや本などで容易に目にされることと思います。

ところが、そうめんにはもう少し混み入ったお話があります。

機械による手延べそうめん

そうめん作りは、深夜から長時間の拘束を伴う大変厳しい仕事です。

人手不足、長時間重労働の軽減、生産力強化、経費削減など、様々な理由によって手延べそうめん作りも機械化が進んできました。

機械化が進んだとて、生産者の皆さんは「より良い」「より美味しい」「より安全な」そうめんをと日々努力され続けています。

そして現在では、「手延べ」の製造工程のほぼ全てを機械でできるようになっています。

皆さんもその工程をインターネット上で容易に見ることができます。

当店では、手延べそうめんの伝統が続いていくためには、製法上の違いを明確にすることが大変重要と考えています。

よって、法律上では「機械打ちのそうめん」と「手延べそうめん」の2つの区分しかありませんが、当店では「機械打ちのそうめん」「機械による手延べそうめん」「手延べそうめん」の3つを区別して取り扱います。

日本国内のほぼ全ての産地のそうめんを網羅、ストックしておりますが、当面の間は限定した「手延べそうめん」をご案内していく予定です。

またご来店いただいたお客様で、それぞれの「手延べそうめん」の製法の詳細についてご要望がありましたら、「全工程手作業」「小引き工程以降手作業」「門干し(大引き)工程以降手作業」「天日干し」などについてもご説明いたします。



ここから先は、さらに難しい話になります。余程そうめんにご興味がある方以外はこの辺でお止めになられることをお勧めします。