そうめん豆知識
[ 美味しく茹でるコツ ]
たっぷりのお湯
一般的なそうめん2把(50g x 2)で1リットルはほしいところです。
少ないお湯で茹でると、茹でムラやひっついたりします。
蒸らし
知ってる人には当たり前ですが、聞いたことがないという人も多数。
5割から7割ほど茹で上がったら蓋をして火を止めて「蒸らし」ます。
緩やかに火を入れることできちんと茹で上がります。また失敗も格段に減ります。
「蒸らし」は太い麺で特に有効です。そうめんでも太めのもの、ひやむぎ、うどんなどでは劇的に変わります。
ととのわせる
熱湯で茹で、冷水で冷やしこむ。
そうめん調理の基本としてよく言われています。
しかし残念ながらこれだけではそうめんの華は開きません。
なぜなら麺がこわばったままだから。
この工程、何かに似ていませんか?
そう、サウナです。
熱いサウナから水風呂に入った状態を想像してみてください。
縮み上がった状態では風味も何も出ません。
人間と同じように、適温の中でゆったりとリラックスさせてあげてください。
具体的には井戸水ぐらいの少し冷たい温度の水または出汁やつゆで2、3分泳がせてください。水分を吸収して麺が内側から張り、風味よくつるつるぷりぷりに仕上がります。
水を吸ってこそ美味しくなる
どのように仕上げるか、狙いによって調理法は変わってきますが、基本的に手延そうめんは水を吸うことで仕上がると思っています。
当店では限られた麺と状況を除いて、ざるそばのように水からあげて盛り付けることはありません。
ワインが抜栓から時間の経過とともに変化するように、そうめんも水分を吸収する過程で変化していきます。
水につけっぱなしでのびない?
大丈夫です。本物はその程度では全くのびません。しなやかになり、雑味が消え、芯の味が姿を現します。
食べてるうちにつゆが薄くなる?
どうぞつゆを足してください。
ただし、水は良いものを使ってください。
[ そうめんの保管 ]
熟成
ワインと同じくそうめんは熟成します。
一般的な食品と比べて賞味期限は3年半などとかなり長いです。
熟成による変化も楽しめますから、夏の終わりに「そうめん が余ってるから」という理由で飽きているのに無理に食べるのはお勧めできません。
せっかくのそうめん です。秋、冬、春、翌夏と長く美味しく楽しんで下さい。
熟成による変化については別項で詳述します。
保管方法
避けるべきは「光」「匂い」「湿気」です。
具体的には、封を切ったらジップロックなどの密閉できるビニール袋に入れてからタッパーなどの密閉容器に保管することがご家庭ではベストです。
大量にあるなど半年以上保管するつもりでしたら是非やってみてください。きれいに熟成していきます。
ちなみにタッパーの長辺が20cm 以上あれば一般的なそうめん (19cm)は収まります。
ビニールパックの素麺は封を切ると、使い切れとばかりに輪ゴムでさえ留められない仕様です。そのまま放置するとあっと言う間に劣化します。
高級そうめん で木箱入りのものがあります。
これは新品でも一刻も早くビニール袋+タッパーに移し替えることを強くお勧めします。
昔と違い木材そのものの質が悪く、木の匂いや虫がそうめんに移る可能性が大変高いです。
経験上、贈答用の紙箱で中のそうめんがビニールに包まれた状態のものは新品の状態でそのまま1、2年放置していてもトラブルは少ないと感じます。
保管場所
お勧めは「本棚」です。
空気と匂いと湿気が篭らず、光が当たらない、そしていつでも目につき簡単に取り出せる場所が「本棚」です。
タッパーに入れたそうめんを本と並べて置くことをお勧めしています。
避ける場所は「流しの下」「床下収納」「流しの上」です。光が当たらない以外全部良くありません。
冷蔵庫も良くありません。
冷蔵庫は匂いも多く、何より「結露」がいけません。出した瞬間に結露します。その結露はそうめんが吸収します。一度で使い切るならまだしも、出し入れの度に結露・吸収の繰り返しです。そうめんにとってプラスはほぼありません。
本棚はちょっと、、、と思われる方は、光があたらないならその辺の見えるところにタッパーに入れて置いておいてください。
細かくお話ししましたが、そうめんは日本で最も長い歴史を持つ麺です。そんなに神経質でヤワなものならとっくに滅んでいます。
「光」「匂い」「湿気」をできる範囲で、完璧じゃなくとも避けていれば結構平気なものです。
虫の発生
まれに、本当にまれに、虫が発生します。
特に1年、2年と熟成させたものに。
正直これは如何ともしがたい。
たまたま出るかどうかです。
小麦粉に限らず粉であるなら、殺虫剤を使ってないなら、出るときは出ます。
出た時はすぐにわかります。シバンムシという茶色い小さな甲虫です。
出たらどうするか?
見つけ次第、虫を取り除きます。
指でつまめます。取らずにほっておくとどんどん増えます。
虫に喰われたそうめんは束に穴があき、白くボロボロと崩れますのでそれは廃棄します。
それ以外のものは普通に茹でて食べられます。
見つけたらすぐに取り除く。これだけしておけば大丈夫です。
[ そうめんの熟成 ]
そうめんとワインは似ている
ワインの楽しみ方の一つとして、どこどこの誰々が作った〇〇という銘柄の何年物、と言って飲んだり、コレクションしたりします。
最近では日本酒などもこのようにして楽しまれる方が増えてきました。
実はそうめんはとても似ています。
長い年月をかけ日本中のあらゆるそうめんを熟成させてきた中で発見したいくつかの法則があります。
ぜひ皆さんもそうめんの新たな楽しみ方、価値の再発見をしてみてください。
熟成したそうめんの呼び方
製造されてからおよそ1年半熟成されたものを「古物(ひねもの)」、2年半熟成されたものを「大古物(おおひねもの)」と呼んでいます。「蔵囲い」と呼ぶところもあります。
製麺所や製麺組合、メーカーによって熟成の上で出荷されるそうめんもあれば、全量新物で出荷する製麺所もあります。
古ければ古いほどいい?
ワインと同じく、作り手、銘柄、食べ手の好みによって違います。
早く食べたほうがいいもの、少し熟成させたほうがいいもの、それぞれです。
ただ、ワインほど長い期間は成長しません。
長くても3年から4年がピーク、まれに10年ほど経ってもほとんど劣化しないことがありますが、美味しく成長するわけではありません。
熟成するとどう変化するのか?
色・香・食感・味わい
- 色
黄色が強くなる。
- 香
フレッシュな小麦の香りが弱くなり、熟成香(ひね香)が出てくる。
枯れた木や枯れ葉のような香り、シェリーや熟成した日本酒に似た香り、など。
- 食感
麺に張りと硬さが出て、むっちりした食感よりパツンと切れる歯切れの良さがでてくる。
博多ラーメンの硬めのような食感という人も多い。
- 味わい
熟成が進むにつれ小麦感は少なくなり、上品で透明感のある味わいに。
熟成させると楽しめるもの
- 新物で入手した「細めのそうめん 」
細いそうめんは基本的に熟成に向きます。
- 製麺時に「油」を使用したもの
理屈はわかりません。あくまで経験上の結果ですが、油を使用したものは成長しやすいです。
熟成させつつ時々食べて、「今が美味しい!」のタイミングを見つけてください。
熟成に向かないもの
- 太いそうめんやひやむぎ、うどん
太い麺は小麦の香りが美味さのカギです。また、熟成させると麺が硬くなり過ぎることがあります。太い麺は一般的に賞味期限が1年のものが多いですが、できるだけ新しいうちに食べることをお勧めします。
- 「油」不使用の手延べ麺
日本海側や東北地方の産地に多い「油」不使用の手延べ麺。
これも理由がわかりませんが、熟成はほぼしない、ただ古くなるだけと感じます。
- 入手時に既に「大古物」
最初から熟成されているものは、それ以上の成長より劣化のリスクの方が高いです。
高級品の場合は今がベストの状態で売り出されています。
安売り品や在庫処分品を買ったなど、大古かどうかわからない場合は賞味期限を見てください。残り1年半を切っていたらもう既に時間が経っています。早めに食べた方が無難です。
- 機械製麺(切って麺にした機械打ち麺)
機械打ちの麺は製麺時に油を使うことがありません。そのせいなのか「延べ」ではなく「打ち」だからなのかはわかりませんが、ほぼ成長することがありません。時間とともに劣化に向かうだけです。
結局いつ食べるのがいい?
ポイントは「熟成香」だと思っています。
ワインでも日本酒でも肉でも魚でも漬物でも、熟成全てに言えることですが、人によってこの「熟成香」に対する許容度が違います。
私の場合は、香りに小麦のフレッシュ感も残し、ムッチリ&プチンと切れる歯応え、味わいの透明感、これらがバランスのいい状態を理想のタイミングとしています。
太い麺ならまだしも、細いそうめんのできたてホヤホヤは麺に締まりがなく、のびやすく、そうめん独特の良い食感がありません。
一般的なそうめんの太さならば、やはり6ヶ月から10ヶ月程度は経過したのものが美味しいと思います。
また、熟成が過ぎると、ひね香が強くなり過ぎ、麺は弾力を失い、ヒネた感じが味にも影響し食べづらくなってきます。
このように感じ出したら一気に食べ進めたほうがよいでしょう。
お家にお宝が眠っているかも?
いつのだかわからない、お中元で貰ったままのそうめんがお家にある方も結構いらっしゃるんじゃないかと思います。
間違ってもいきなり捨てたりしないでください。
特に包装紙も破いてない場合、絶妙に熟成して美味しくなっているかもしれません。
まずは中身を確認してみましょう。
カビや虫が出ていませんか?
出ていなかったらまずはok。
次に1束か2束茹でてみましょう。
賞味期限?多少のオーバーならそれより自分の舌を信用しましょう。
10年物を食べたところでカビが出てない限り腐っていることはまずありません。(すみません、保証はしません)」
特に香りや味が気にならず食べられたなら大丈夫。
それどころかとっても美味しいかもしれませんよ!